「教師という仕事ってブラックなの?」
「教師の仕事を頑張っているが、なんか苦しい」
という疑問や感想をもっている方に向けて記事を書きます。
本記事を読むと
【教師を志す方へ】
- 教師を目指すのか、目指さないのかを考えるきっかけになる
【教師の仕事がつらいと感じる方へ】
- ブラックな要素を改善して、本当のやりがいを取り戻せるヒントを得られる
- 教師という仕事を続けるべきかを考えるきっかけになる
一緒に考えて、より良い未来にしていきましょう!
以前の記事
【教師という仕事は幸せ?】幸福が最大化される7つの要素をどれだけ満たしているか検証
では、幸せな職場について考えました。
今回は、学校が「最悪な職場に共通する8つの悪」にどれだけ当てはまるのかについて、考えていきたいと思います。
今回の参考書籍も『科学的な適職』鈴木祐(著)です。
職場が幸せであるためには、
幸福の要素 > 不幸の要素
でないと、いけませんよね?
でも、この条件だけでは不十分のようです。
というのも、
人間の脳はネガティブな事に反応しやすいから
です。
脳科学のデータによれば、私たちの頭なネガティブな情報を3~4秒ほどで処理するのに対し、ポジティブな情報を長期の記憶として取り込むまでには12秒もかかります。
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
ポジティブな感情に比べて、負の感情の方が4倍も記憶に残りやすい
なので、単純に考えると、「幸福の要素」が「不幸の要素」の4倍あって、ようやくプラスマイナスゼロって計算になります。
つまり
「最悪な職場に共通する8つの悪」は絶対に阻止したい
わけです。
これをクリアするのは、なかなか大変そうなです。
1位:ワークライフバランス崩壊
2位:雇用が不安定
3位:労働時間が長い
4位:シフトワーク
5位:仕事の裁量権がない
6位:周囲からのサポートがない
7位:組織内に不公平が多い
8位:通勤時間が長い
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
- 生徒と相談して、部活動の休みを増やす
- 部活動の指導者を保護者から見つける
- 周囲の目を気にせず、不要な仕事はしない
- 職場の近くに引っ越す
個人でできることは限られていますが、効果はあると思います。記事を参考にして、職場環境の改善を図ると、変化があるかもしれません。
1位:ワークライフバランス崩壊
ワークライフバランス崩壊とは、仕事と生活のバランスが崩れてしまっている状態ですね。
僕も経験しています。教師の方なら多くの人が、この状態なのではないかと思います。
平成28年度(現在)において、1日の平均勤務時間は教諭が、小学校で11時間15分、中学校で11時間32分だからです。
仕事を持ち帰っている時間も含めたら、労働時間はもっと増えます。
プライベートに仕事を持ち込む働き方のことで、その悪影響は受動喫煙のダメージをはるかに上回ります。
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
具体的な数字でいうと、
およそ2600人を5年にわたって追跡したリサーチでは、プライベートと仕事を切り分けずに働き続けた人は、うつ病にかかる率が166%も高く、不安障害の発症率も174%ほど上昇していました。約2000人を対象にした別の研究でも、帰宅後も仕事を続ける人は幸福度が40%下がる傾向が認められています
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
働き方改革が進む中、今後、労働環境が良くなっていくとは思いますが、実際どのように変わっていくかは読めない所もあります。
現状、教師の労働環境は恵まれているとは言えなさそう。
人間を相手にする仕事なので、生徒との関係に悩み、休日や平日の勤務時間外も気持ちが休まらないこともあります。
プライベートにまで仕事が及んで、ストレスに気づけないまま心身を削り取られていきやすいです。
僕の経験した例では、
- 休日や勤務時間外(早朝、夜中)に保護者から連絡がある
- 休日に自宅に生徒が訪ねてくる
- 夜に生徒からLINEがくる
- 夜中に教頭から連絡があり出勤する(警察による現場検証のため)
決して頻度が多いわけではなかったです。
でも僕の場合、休日に仕事をしたり、部活動終了後も(未経験競技だったため)自分で自習練習をしたりして、ワークライフバランスはワークに偏りまくってました。
部活動の自主練習は、興味半分、責任半分ってやってました。でも、もし部顧問じゃなかったら、やらなかったです。
初めて担任を受け持っていたときには、休日に生徒のことが頭から離れずに気が休まらなかったこともありました。
データで見ると、ほとんどの人がワークに偏っていると言えそうです。
1週間の勤務時間は、休憩時間を除いて38時間45分。
1週間の勤務日数を5日とすると、
小学校も中学校も8割を越える人が毎日2~3時間以上残業している(平成28年度現在)
ってのがわかります。
教師の勤務実態や教員採用試験の倍率の低下などをデータで客観的に示し、現代の日本の教師の状況について知ることができる本もあります。
国として教育に理想を掲げるなら、それに見合うコストをかけるべきでは?って思います(もちろん世論とか財政とか色々と難しい側面もあるとは思いますが、そんな気持ちになりました)
【週41時間以上の労働で脳卒中のリスクが上がる】
・週の労働時間が40時間までなら目立った問題は出ない
・週の労働時間が41~48時間になると脳卒中が起きるリスクが10%高まる
・週の労働時間が55時間を超すと、脳卒中リスクが33%、心疾患リスクが13%、糖尿病リスクが30%高まる
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
小学校で約58%、中学校で約74%が週の労働が55時間を越えているので、教師の多くが脳卒中(脳の血管がつまる病)になりやすい状況にある
仮に亡くなることがなかったとしても、学校の先生が倒れて入院することは普通にあり得そうです。
なので、少しでも時間を生み出し余裕を作ることが大切だと思っています。
コチラの記事は、教員採用試験の受験者に向けて記事を書きましたが、応用できることもあるかと…
【まとめ】
休日や平日の勤務時間外に、仕事をやったり考えたりすると、プライベートの時間が削られて不幸になりやすく、健康へのダメージも大きい
2位:雇用が不安定
公立学校の教師は、雇用が安定していますね
安心できます。これは、すごく良いメリットです。
私立学校や企業では倒産って可能性もあるので、心のどこかで不安を感じながら働いている人もいるかもしれません。
公立学校の教員は、懲戒免職もありますが、よっぽどな服務規律違反しない限りはないですよね。
ただ個人的には公立学校の教師も、絶対に雇用が安定だとは言い切れないって思ってます。
かつては国有だったものが民営化された例があるからです。
- 電電公社(1985年)
- 国鉄(1987年)
- 郵便局(2007年)
「いやいや、学校はないだろ」
っていう方もいるとは思いますが、国立大学も法人化(2004年)して公務員ではなくなりました。
今すぐに学校が法人化するなんてことはないと思いますが、将来的にはゼロではないかなってのが僕の意見です。
【まとめ】
公立学校の教師の雇用は安定している。
ただし人生100年時代の現代、自分が働いている間もずっと公務員のままでいられるっていう過信は良くないかもしれない。
3位:労働時間が長い
教師の労働時間が長いのは、「1位:ワークライフバランスの崩壊」でも述べた通りです。
とくに若手は長時間労働になりがち。
本人が長時間労働を選んでいるところもあるし、いろんな力が働いているところもあるかもしれません。
参考までに、僕の残業時間のデータが残っていましたので掲載します。毎日、エクセルで記録していたものです。
初任校1~3年目のデータです。※3年目の11月からデータがない
月 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
---|---|---|---|
4月 | 101.5 | 152.3 | 148.7 |
5月 | 116.0 | 151.1 | 152.3 |
6月 | 85.2 | 136.9 | 97.6 |
7月 | 88.8 | 111.0 | 84.4 |
8月 | 86.0 | 100.4 | 78.8 |
9月 | 123.4 | 148.2 | 92.8 |
10月 | 119.2 | 154.5 | 106 |
11月 | 135.3 | 135.0 | 記録なし |
12月 | 104.3 | 110.7 | 記録なし |
1月 | 101.7 | 122.3 | 記録なし |
2月 | 77.1 | 138.8 | 記録なし |
3月 | 113.5 | 148.8 | 記録なし |
平均時間 | 104.3時間 | 134.2時間 | 108.8時間 |
過労死ラインの80時間を下回った月は、31月間のうち2月間です。
過労死ラインを下回った2回は、1年目の2月(インフルエンザ罹患)と3年目の夏休みのときですね。
ちなみに、2年目の4月から6月まで90日連勤もありました(半日勤務も含めて)。
冷静な判断が下せないほど、僕の頭はおかしくなっていたのだと思います(笑)。
ちょっと冗談を込めて紹介をしましたが、体調を崩したこともあるし、精神的にも参ったことも何度もありました。
子供のためとはいえ、本当につらかった。
原因として
- 毎日する早朝の庭掃除(初任者はやるっていう謎の雰囲気)
- 部活動での練習試合や大会運営および自主練習(全国大会にも出場する部だったので、未経験の自分も練習やらなきゃって思った)
- 慣れない担任業務を一人でこなす
などが挙げられます。
今思えば、
「そんなことやらなくてもいいじゃないの?」
って思うようなこともやっていました。
若手の割合が少ない職員の中でベテラン教師から批判されないように必死に頑張っていたのがいけなかったのだと反省してます。
批判を恐れず、あまり効果がない仕事はバッサリ捨てて、教師にしかできない”子供のためになること”にだけ絞ってやればよかった
数年も前の話だし、今後は働き方改革で少しずつ変わっていくだろうと思います。
休日の部活動における生徒の指導や大会の引率については、(中略)地域の活動として地域人材が担うこととし、(中略)令和5年度以降、休日の部活動の段階的な地域移行を図るとともに、休日の部活動の指導を望まない教師が休日の部活動に従事しないこととする。
出典:学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について(スポーツ庁)
【70代半ばの先生が話してくれたこと】
この先生を愛着を込めて「おじいちゃん先生」と呼ばせていただきます。
おじいちゃん先生
「若い頃、バリバリ教員をやっていたときは、土日も1日中、部活動だったんだ」
僕
「奥様は不満とは言わなかったんですか?」
おじいちゃん先生
「子供が成人した後に、言われたかな」
僕
「なんて言われたんですか?」
おじいちゃん先生
「テレビを見ていたら、動物の番組があって…。鳥の夫婦にも、子育てに協力的な夫とそうでない夫がいるらしくてな」
僕
「人間も一緒かもしれないですね(笑)」
おじいちゃん先生
「それで、後ろにいた妻に『俺達も、協力して子育てを頑張ってきたよな』って言って振り返ったら、妻が泣いてた」
僕
「・・・。(言葉がでない)」
おじいちゃん先生
「そしたら妻が『あんたは子育ての一番忙しい時期に何もしてくれなかったじゃない』って言ったんだ」
当時は「当たり前」だったと思います(僕も高校生のとき部活動の休みは基本的になかった)。
この話を聞いたとき、めっちゃ悲しくなりました
先述の労働時間がこの先もずっと続いたら、僕は心身が持たないっていうのが正直な感想でした。
とにかく学校はあれもこれもしないっていう方針が必要!
【まとめ】
教師は毎日、長時間労働になっている。30歳以下は12時間前後が平均。
4位:シフトワーク
シフトワークは、夜間とか早朝とかに仕事で働かなければならない仕事です。
教員の仕事は、普通、夜間のシフトはないですね。
寮の担当になると、あったりもします。
あとは夜に呼び出しも経験したことがありますが、一般に稀なことだと思うので影響は小さいです。
2万人の労働者を調べた2014年のメタ分析によれば、9時5時で働く人と比べた場合、週に3回以上のペースでシフトワークを行う人は糖尿病の発症リスクが42%上がり、コレステロールや血圧も激増していました。
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
さらに
年に50日以上のシフトワークを続けた人は、脳機能のスコアが大きく低下しており、この数値を年齢に換算すると同年代の人に比べて平均で6・5歳ほど脳が衰えた計算になります。
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
身体への害が大きいことがわかります。
教師にシフトワークはない。
この点は大きなメリットと言える。
5位:仕事の裁量権がない
このことは以下の記事で「自由:その仕事に裁量権はあるか?」で検証しています
授業や学級経営には、ある程度自由が存在する。
働く場所や時間帯は決める権利がない。
6位:周囲からのサポートがない
教師は長労働時間なので、余裕が生まれにくいと思います。
親切な人もいるけど、余裕がないから快いサポートは受けられないかもしれません。
手厚いサポートはないと思っていた方が良いです。
それでも助けてくれる人はいます。僕も話を聞いてもらえるだけでも、すごく気持ちが楽になりました。
長時間労働が現状である。
余裕がないから周囲からのサポートを受けづらい。
7位:組織内に不公平が多い
【賃金が不公平な企業に勤めると早死にする】
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
私たちは自分の幸福を他人との比較で決める生き物です。そのため「賃金の不公平感」にはことのほか敏感で、スタンフォード大学が228件の先行研究を精査したメタ分析でも信賞必罰が明確でない企業は社員の死亡率や精神病の発症率が上がると報告されています。
不公平感があるかないかは、職場によるところもあると思います。
教師の仕事で生まれやすい給与に関する不公平感は
- 担任をやってもやらなくても給料が同じ(担任の負担は大きい)
- 放課後や休日に部活動指導をしなくても給料はほぼ同じ(休日には、3時間で3000円くらいの手当がでる。平日は手当なし。)
- 時間外の労働が長いのに残業代がでない(給特法により基本給の4%はでる)
が挙げられるかと思います。
一生懸命に働いている(長時間労働の)人ほど時給が下がっていきます
日中に十分時間を確保できないため、1対1の生徒との関わりや授業準備を放課後に(部活動後に)時間をかける方もいますよね。
教師以外の人から
「そんなの好きでやっているんだろ」
って言われた経験がある人もいると思うのですが、当然、全員が好きで残業して頑張っているわけではないですよね。
やることが多すぎて、本来の仕事にも手が回らない
って感覚だと思います。
雇用の安定があっても、仕事量に対する給与に関して不公平を感じる人はいると思います。
ただ校務分掌については希望が出せて、仕事量が均等になるような配慮がされるなど公平な部分もあります。
対策としては、どんな大変な仕事を受け持っても
生徒のためといって仕事をやると際限がないので、やらない仕事を決める
っていうのが大事だと思います。
【まとめ】
給与と仕事に関しては、不公平な部分もある。
担任や部活動をやっていなくても、また勤務時間外に生徒のために時間をかけても、給与は変わらない ※部活動手当も残業代も勤務の実態からすれば雀の涙
8位:通勤時間が長い
【通勤時間が長くなるほど人生が不幸になる】
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
1985~2003年にかけて行われた幸福度調査を分析し、「長時間の通勤がもたらすストレスの高さは年収が40%アップしないと割に合わない」との結論を導き出しています。たとえば、長時間の通勤に耐えながら年収400万円をもらう人がいた場合、その苦痛は年収が560万円に上がらないと埋め合わせることができない、というわけです。
さらに
【通勤時間が長いと太って離婚しやすくなる】
引用元:『科学的な適職』鈴木祐 (著)
カリフォルニア大学が10万人の健康データを分析した調査では、通勤時間が長い人ほど肥満が多いうえに離婚率まで高いとの傾向も出ています。長時間通勤は、あなたの体型と結婚生活にまでダメージを及ぼすわけです。
勤務日以外は、生徒や保護者と会わずに過ごしたいって人は多いと思います。
関わるのが嫌じゃなくても、気持ちが仕事モードに切り替わって気が休まらないんですよね。
気を休めるために、学校から離れた場所で住んでいる人もいるかと思いますが、僕は職場の近くに引っ越しをすることを強く勧めます。理由は、
勤務時間がただでさえ長いのに、通勤時間まで長かったら、身体がもたないからです
研究データを見てもわかるように、通勤時間が長くなると、ストレスがたまって、太るし離婚もしやすくなるってでています。
家庭の事情で引っ越しが難しい人もいると思いますが、自分の健康や離婚のリスク上昇などを天秤にかけて検討した方がよいと思います。
通勤は毎日発生するから、生活に与えるインパクトが大きいです。
引っ越し代金でぼったくられないように相見積もりを取ることがオススメ。
【まとめ】
職場(学校)の近くに住むには抵抗があるから通勤時間がかかる人が多いかもしれない。個人的には学校の近くに住むのがオススメ。
【まとめ】 教師の仕事が「最悪な職場に共通する8つの悪」にどれだけ当てはまるか
僕の独断と偏見で、このような結果に。
◎1位:ワークライフバランス崩壊
✕2位:雇用が不安定
◎3位:労働時間が長い
✕4位:シフトワーク
△5位:仕事の裁量権がない
△6位:周囲からのサポートがない
○7位:組織内に不公平が多い
△8位:通勤時間が長い
◎よく当てはまる
○わりと当てはまる
△ちょっと当てはまる
✕当てはまらない
教師はやりがいのある仕事です。
しかしながら、大変な面もあります。
多くの物事には良い面と悪い面があるように、教師の仕事もそうだと言えます。
今回の記事を読み、職場のマイナス面も受け入れて
「それでも教師になりたい!」
「教師を続けたい」
って思ったなら頑張りましょう!
無理だと思うなら、ほかの職業に就職したり、転職したりした方がいいと思います。
子供のために仕事をやるのも大事だけど、自分の人生を犠牲にしていいわけじゃない
No pain, no gain.(痛み無くして利益なし)
あきらめるには勇気も必要。
ではでは。